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『2020年へ向かう、森と木を活かす「グリーンエコノミー」シンポジウム』〜デザインと異業種連携で産み出す、新時代の森づくり・木づかい〜

平成25年12月12日(木) 14:00〜16:30 「東京ビックサイト」レセプションホールA
主催/(公社)国土緑化推進機構、美しい森林づくり全国推進会議
共催/経団連自然保護協議会、(一社)日本プロジェクト産業協議会、(特)活木活木森ネットワーク
後援/林野庁

開催趣旨

開催趣旨

我が国でオリンピック・パラリンピック大会が開催される2020年は、気候変動枠組み条約に基づく京都議定書第2約束期間及び生物多様性条約に基づく愛知目標の最終年です。

このため、国土の約7割という世界でもトップクラスの豊かな森林を有し、古くから「木の文化」を育んできた我が国が、2020年という節目の年に、森と木を活かした「グリーン・エコノミー」の創出による持続可能な社会づくりを発信すれば、内外の大きな注目が集めるものと考えられます。

近年、森林・林業分野においては、多様な行政施策が展開されるとともに、幅広い業種の民間企業等が国産材の活用への関心を高めており、新たな技術の開発やデザインを生み出すことにより、森と木を活かした多様なライフスタイルが提案されています。

そこで、デザインや異業種との連携の視点から、森と木を活かした新たな商品・サービスに関する最前線の取組を紹介しつつ、2020年に日本から世界に発信することが期待される、森と木を活かした「グリーンエコノミー」の展望と課題について議論するシンポジウムを開催しました。

プログラム

開会挨拶

宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長、東京農業大学 教授)

末松 広行 (林野庁 林政部長)

基調講演

「新時代の森と木を活かすエコプロダクツ 〜グッドデザイン賞等を事例に」

益田 文和 (東京造形大学教授、(公財)日本デザイン振興会理事、(株)オープンハウス 代表取締役、エコプロダクツ2013「エコ&デザインブース大賞」審査員)

「感性価値デザインと新時代の森と木を活かすデザイン〜キッズデザイン賞等を事例に」

赤池 学 (科学技術ジャーナリスト、(株)ユニバーサルデザイン総合研究所代表、(特)キッズデザイン協議会 キッズデザイン賞 審査委員長)

話題提供

「経済界と森林・林業・木材業界の連携で生み出す「グリーンエコノミー」〜「林業復活・森林再生を推進する国民会議」の立ち上げ〜」

高藪 裕三 ((一社)日本プロジェクト産業協議会/JAPIC 専務理事)

「木のやすらぎと、森のめぐみを、次の世代へ 〜国産認証材を活用した都会を中心とする木づかい促進」

赤間 哲 (三井物産(株) 環境・社会貢献部 社有林・環境基金室 室長)

パネルディスカッション

「2020年に向かう、森と木を活かす「グリーンエコノミー」の展望〜デザイン&異業種連携で産み出す、新時代の森づくり・木づかい〜

<モデレーター>

宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長、東京農業大学 教授)

<パネリスト>

益田 文和、赤池 学、門脇 直哉((一社)日本プロジェクト産業協議会 常務理事)、赤間 哲、末松 広行(林野庁 林政部長)

■ パネルディスカッション

「2020年に向かう、森と木を活かす「グリーンエコノミー」の展望」 〜デザイン&異業種連携で産み出す、新時代の森づくり・木づかい〜

<モデレーター>
宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長、東京農業大学 教授)
<パネリスト>
益田 文和、赤池  学、門脇 直哉((一社)日本プロジェクト産業協議会/JAPIC 常務理事)、赤間 哲、末松 広行(林野庁 林政部長)
<コメンテーター>
出井 伸之(美しい森林づくり全国推進会議 代表)

パネルディスカッション

宮林皆様、あらためましてこんにちは。大変お疲れのところ、時間は限られていますので、あまり余分なことを言わずに進めたいと思います。2020年に向けて、木材森林をどう認識していくか。その前に、グリーンエコノミーという国際規模における提言も行われていますので、それを意識して展開していきます。

パネラーの方々は先ほどご報告いただいた皆様と、来賓でご挨拶いただいた林野庁の末松部長に入っていただいています。

最初に、最近の動向を林野庁から説明していただいてから進めたいと思います。

末松林野庁末松です。本日はいろいろなお話を聞かせていただき、若干重なるところもありますが、私の方から最初に簡単にお話したいと思います。

019tikuseki今、時代が森林の蓄積量が増えている時代にあるということをグラフにしてみました。森林の面積は国土の68.5%、2500万haです。その面積は変わっていませんが、そこに生えている木の体積が増えてきています。これは推計でして、科学者の方々はこれより多いと言っている人も多いのですが、林野庁の控えめな推計によっても昭和40年の頃の18億8700万m3に対して今は49億m3ほど日本の森には木が生えています。

しかし、ひたすら植えたのはいいのですが、その手入れができていないのが最近の状況です。よく言われますが、手入れをしていないことは非常に大きな問題です。019genjoujunkan-s一方で、世界の各地では砂漠化したところに植林をしています。中国などはものすごい勢いで植林をしていて立派な行為だと思います。日本の場合は先輩たちが行ってくれていました。今、それらを使える時代になりつつある。それなのにうまく使えていないという2番目の問題が起きている状況です。その何が問題かというと、国土保全などいろいろ言われています。今は手入れをして使っていくことが大切な時代だということが基本認識です。それでバランスのとれた森にしていくことが今の課題です。

よく言われますが、天然林と人工林は、ドイツの場合は1000万m3の森のほとんどは人工林です。日本の場合は2500万m3のうち1500万m3は天然林です。両方あるので両方の良さを活かしていくなかで、使っていくという面では植えてきたものをきちんと使うことが大切だと思います。

そのための取り組みを進めていかなければなりませんし、私の個人的な感想かもしれませんが、いま、それが動き出し始めているという手応えを感じています。公共建築物の木造化の話も、ある時期、政府が国を挙げて木材を使うことをやめようといった時代がありました。その時は、木造の家は火事で燃えて地震で倒れて人命や財産を守る上でよくないと思われた時代があったからですが、今は木造の家だけ基準が甘くなったわけではなく、きちんと基準を満たしたものは地震にも火事にも強い、それであればもっと使おう、木の良さを活かしていこうという時代になったと思っています。木質バイオマスや新しい木材製品を作って輸出していくようなことも少しずつ初めていく時期だと思っています。

019pd-riyouこのように時期は移り変わってきていますが、順調にいくかというと、芽が出かけたかという感じで、これをどうやってしっかりした流れにしていくのかという段においては、政府が号令をかけるだけでなく民間の方々のいろいろな知恵をうまく後押ししていくことができればと思っています。

現在は、住宅にも木材を使っていただこうということで、住宅を作る際、内装を木質化するときのための木材利用ポイントという事業を始めています。いくつかいいなと思う動きがあります。いろいろな住宅メーカーの方がこれを機会に地域の木を使った住宅を作ったりとか、今までなかなか木造化できなかった、地域の材を使えなかったところに地域材を使うような取り組みが進んできています。副次的効果かもしれませんが、ポイント事業をする際は工務店さんがポイントを発行したりという手間があるのですが、その際に使う木材がつながっていかなければならないということで、各地域で木材産業の方々と住宅メーカーの方々が協議会などでつながるということも起こり始めています。

019pd-biomassバイオマス利用の話です。木材についてはカスケード利用が大切で、燃やすのは最後の手段、最初から燃やすのはとんでもないという方もいらっしゃいますが、なかなか木が四角く育ってくれないこともあり、どうしても枝葉の部分や周りの部分でエネルギー利用に適しているものもあります。そういうものでどれだけのことができるかという点では、ドイツなどではエネルギー利用が進んでいます。日本でも木質バイオマスの発電所をつくって1年間稼働してみたら、地域に10億円ほどの電気代が入り、1万2000世帯の電気がまかなえて発電所に14人、山で作業をする人が38人や50人などと言われていますが、雇用が生まれています。これまで使われていないことからこのようなことができる。これは一地域だけでなくいろいろな地域でできるのではないかと思っています。

019pd-olynpic2020年に東京オリンピックがあります。長野オリンピックの時のエム・ウェーブという施設は長野の材を使った競技場です。バンクーバーの際も、木材を使おうということで利用が進んでいます。オリンピックの施設を作る際、森林国と言われる国はそれを活かしていこうという取り組みがされました。またバンクーバーの時は表彰台を木質にしたりといろいろな工夫がされています。我が国も木の資源が出てきていろいろな技術開発や取り組みが進んできたところですので、2020年のオリンピックをきっかけに、身近に森の木を使うような生活になっていけばいいのではないかと思っています。最初の話は以上です。

宮林ありがとうございました。私たちが使おうとしている森林は、かつては森林を使いすぎて荒らしましたが、そのあといろいろな条件があってスギやヒノキを植えてきました。植えてきたスギやヒノキがはじめて使えるようになりました。そのはじめて使えるようになった時にどうするかという問題にぶつかっているということですね。

皆さんの中で木材利用ポイントの話が出ましたので、木材利用ポイントをご存知の方、手を挙げてみてください。では、どうすればもらえるかということもご存知の方。だいたい半分くらいが知っていて、どうすればいいかということはほとんど手が挙がりませんでしたね。これはもう少し頑張らないといけないということだと思います。今日は業界の人が多いのでそのあたりのことは皆知っているのかと思いましたが、残念でした。

これから木を使い、私たちの暮らしの中に入れていこうということで、非常に好条件にあります。2020年問題もあります。グリーンエコノミーという問題もあります。そういう中で、業界としてこのチャンスをどう捉えているのか、そのあたりからお話を伺いたいと思います。JAPICからは門脇直哉さんに登壇いただいていますので、門脇さんからお願いします。

門脇JAPICの門脇でございます。業界という意味合いではJAPICはいろいろな産業が集まっている団体で、その中でいろいろな活動をしています。先程も高薮が話しましたとおり、非常に木が大好きな三村明夫が日本商工会議所の会頭になりました。日本商工会議所は126万人の会員がいますが、そこで林業を取り上げていくということで、相当な追い風にはなると考えています。

IMG_2090もう一つ。今日、どうしても宣伝をしなければいけない一つとして、来週18日に林業復活の森林再生を推進する国民会議を開催します。木の良さを知ってもらおう、木を使ってもらおうという想いの中で国民運動を立ち上げていくわけですが、準備も今まさに佳境に入っています。私自身も驚いていることに、発起人を200名集めようということで行ったのですが、木に対する注目度は高く200人はあっという間に集まりました。さらに言えば賛同者ということで広く皆様にお声かけする必要があり、これも苦戦するだろうと想像していたのですが、1000人という目標が集まり、今は1万人を目指そうなどという話になっています。木が今非常にいい環境にある中で、木に対する注目度が非常に高まっていると感じています。我々産業界としてもバックアップをしていきたいと考えています。

宮林ありがとうございました。大変な大きな反応があるということです。まだ募集しているそうなのでどんどん賛同していただければと思います。このような大きな動きも今出てきているということです。

最初から三井物産さんでは、これからどんどん国産材を使っていこうとしているということですが、その中でも今は非常にいい転機に来ていると思います。それを業界としてどのようにすればいいとお考えでしょうか。

赤間林業をずっと続けてきている立場としてですが、丸太を持っていく先の製材工場の問題が非常に今あるのではないかと思っています。私どもは北海道を中心に林業を行っていますが、北海道で生産される主な樹種はカラマツという木です。非常に固くていい木ですが、この用途は実は合板です。コンクリートを打つ時に使う木の板のような合板にしか用途がありません。他にもパレットや杭丸太などの用途はあります。合板は日本各地に工場がありますが、住宅用や内装用の家具や建具を作る加工屋さんを今まさに充実させていかなければならない。そういうところに意匠性を付けることで付加価値が付くと思っています。日本は今後少子高齢化でどんどん人口が減っていきますから総需要はあまり伸びません。ただし、日本木材資源を活かして輸出を考えていくべきでしょう。その時にはデザインをつけて、内装や家具で日本の産業が打って出なければならない。その加工業の充実が一つ重要ではないかと考えています。

宮林やはり北海道はカラマツがたくさんありますので、加工施設そのものがあまりないということでしょうか。日本全体から見てもデザインを使った加工はなかなかないと思いますが、先ほど、益田先生と赤池さんからデザインの話が出ました。まさにデザイン問題は付加価値を高めます。今までのような木材の使い方は、あるものとして使っていましたが、そうではなくそこに理由を付ける、高付加価値を付けるような、あるいはハートに訴えるなどいろいろなことが言われています。2020年までの間にどのような展開を期待すればいいか、益田先生からお願いします。

益田デザインが直面している問題もあり、作れないのです。少し前は木のものが生活の中にたくさんありました。お風呂の桶などにも木を使っていました。その当時は木を加工する加工所もあったし、身近に様々な職人さんがいました。建具も木が当たり前でしたが、いつの間にかそれが全部プラスチックや金属に変わってしまいました。

そうすると、我々が何か木で作りたいと思ってもお願いするところがないというのが現状です。伝統工芸や建築関係はありますが、普通のマスプロダクツの製品では本当に木が使われなくなってしまっています。たまたまこのメガネは木ですが、これはヨーロッパ製です。日本ではほとんどありません。生産設備、技術そのものが失われているということは非常に大きな問題です。我々はデザインしますが、それが作れない状態で、ワンセットで解決していかないといけません。

宮林先生のメガネ、それは木なんですか。これは日本ではなかなか考えられないことかもしれませんね。やはりそういうものを作っていく人、あるいは技術などがかけているのではないか。赤池さん、いかがでしょう。

赤池僕もグッドデザインの審査員をずっと務めてきましたが、モノづくり全般で言うと、今はクラフトというものへの再評価が始まっています。あるレベルの物語性のある伝統や職人技が関わっている木製品ということです。家具、遊具、玩具はクラフトを意識した形で商品開発をしていく、そういうことが得意なデザイナーたちもたくさんいますので、そういう方々とコラボレーションするだけで、売れる木製品の実験などもできると思っています。

あとはマスプロダクトの世界があります。一例としてリクシルさんの木質門型フレーム工法のお話をしましたが、赤間さんがご提起されていた制作会社そのものが山側にないという課題のソリューションになるのではないかと考えています。僕は目覚めた大手企業がマイケル・ポーターさんが提言したCSV、クリエイティング・シェアード・バリュー、事業益と公益を両立させる開発投資を行わない企業には持続性がないという考え方で、木質門型フレームをつくる製材工場をリクシルさんが自ら山側に入り込んで、あるいは投資をして自社の商材を作っていくようなモデルが出てくるのではないかと思っています。そうした時に山とつなげていく地域の人材たちが大手企業に対してどのようなビジネススキルをもっているかということを、今のうちから問題意識をもって磨いていくとか、提案そのものを山側から大手建材メーカーやハウスメーカーに持ち込んでいくようなアクションが期待されているのではないかと思います。

宮林そういう場面をできるだけ創出していく、そこが大事だ。そうかもしませんね。企業から山側に技術と一緒にものづくりを売り込んで行くという姿勢は大切だと思います。そのあたりで末松さん、どう展開していけばいいかという方向性はいかがでしょうか。

末松産業行政という立場で見たとき、昔は木材産業も注目してもらった過去があり、日本の行政組織は素材を生産するところまでが一次産業の担当で、ものを作るところは次の二次産業の担当という分け方になっていて、時代によって、産業行政と見た場合、あまりこちら側に投資する、行政資源を集中するということはありませんでした。それは仕方のないところもありますが、出るようになったのだから、これからそういうものをきちんと見ていこうということを政府全体で行っていくことが大切だろうと思っています。

それと、実際に行政が何をするかというと、いろいろな支援をするとかお手伝いをするということは省庁の所管でやらなければいけないということでもないので、我々の側でできることも少しあるのではないかと思っています。

たしかに、目覚めた企業という話で合板工場と製材工場でも少し出てきましたが、モノによって政府の補助金が出る場合があるので見ていますと、これまでは全部港立地が多かったのですが、最近建てられるものは内陸立地型が増えてきました。内陸立地型は、工場を建てる企業は覚悟が必要になります。そばの国産材を使って合板を作る、板を作るという覚悟です。港から持ってくることも最悪のケースではあるかもしれませんが、基本的には国産材でやろうと。20年くらい前はほとんど内陸側のものが港に移ってきましたが、再び内陸でやろうという企業が少し出てきているということは感じます。またそういう動きは、山で木を切る人、加工する人、そういう方々が両方とも山間部に行けば、派生する地域の経済に対する効果や雇用促進効果が非常に大きくなります。我々もそういうところを応援していきたいと思っています。

宮林伝統的工芸産業などを調べたデータを見ると、全国の市町村に2〜3個ほど品物があり、10万件くらい出てきます。そこにどのくらいの人が就業しているかというと、4万人から6万人くらいいます。日本の伝統工芸はすごいものを持っているので、和食がユネスコの無形文化遺産にもなりましたが、地域の中から「この商品はこういうものだ」とピシッと売り出していく。そこに新しい技術を入れていく、そこに企業の支援や政策的支援があれば、かなり大きなものになるかもしれません。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

IMG_20972020年はちょうどオリンピックと重なりますが、この年は生物多様性の高度計画の締切であったり、京都議定書の第2段階の締めであったり、多様な形で環境問題が出てきます。今はグリーンエコノミーという表現も出てきました。そうなると、私たちは2020年までの間に具体的に何かをしていく必要があるのだろうと思っています。環境をよくすること、木を使うことで何を具体的に行えばいいのか。門脇さん、産業界としてやっていくべきことはありますか。

門脇特にこれという話ではありません。ただ、2020年に東京オリンピック・パラリンピックがありますので、ここでなんとしても日本の持つ技術やシステム、ひいていえば木のもつ良さを世界の皆様に見てもらう機会を作ることが、産業界、もっといえばJAPICの仕事だと思っています。既に東京都などにも接触を始めていますが、選手村や国際競技場のあたりに少しでも木を使っていただいて、それを2020年に世界の人に見てもらう。日本の木っていいなと思ってもらった中で、それが2020年以降にまた使われていくという道筋を我々としては作っていきたいと考えています。

宮林これから18日に大きな形で国民運動として展開していくわけですので、期待するところが大だと思います。ただやり始めるといろいろな課題が出てくるのはないかと思いますが、その課題については赤間さん、どのように捉えているでしょうか。

赤間身の回りに木をたくさん使う時の課題は、規制ということがあります。防火や耐火、建物を建てる際の規制には結構厳しいものがありまして、木材を使えるようにするための法整備もあります。国交省や農水省のほうで、今すごく急いでやっていただいていますので、法規制とクリアするような製品に意匠性をつけて、将来的に東アジアを中心にした人々に日本のカルチャーを売っていくことのできる土台を作ることではないかと思っています。

宮林日本の持っている技術と知恵。木を使うにはかなり知恵が必要です。そういう部分を規制緩和しながら前に出す。そうすると企業も入りやすいよ、ということなのかもしれません。どうも入りにくいところがあるようです。デザインの関係から見ると、赤池さん、どう捉えているでしょうか。

赤池模範演技を多くの人たちに見ていただく必要があると思っています。そういう意味で、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞ときたら、僕はぜひ林野庁さんにウッドデザイン賞という、木づかいのフロントランナーモデルを顕彰するような賞制度をぜひ創設してもらいたいと思っています。もちろんそこでは遊具や家具なども入れてあげたいと思っていますが、国産の木を使った新しい発想の住宅商品や工法、建材、内装材、外装材、エクステリア材、木質バイオマス製品など、「私たちはこういう形で商品化したよ」と発信する場にするべきだと思います。かっこよくて売れそうなものにきちんと賞をあげて、つくり方やビジネスモデルを第二、第三の山側の地域に知らしめていくような流れを作っていく。予算さえ付けていただければすぐにスキームができてしまうのではないかと思います。

宮林これはすごくいいアイデアですね。やはり地域から出てきたものを加工して使い、それがまた地域に戻っていくという一つのサステナブルな循環を捉えたWSD、ウッド・サステナブル・ディベロップメントのようなものができて、それが賞になっていけばすごいと思いますが、末松さん、どうですか。

末松5年前くらいに、まだこういうシンポジウムがあって、その際、私は農林水産省の食料安全保障課長をしていたのですが、フード・アクション・ニッポン・アワードを作ってはどうかということを公開の場で言われて、すごくプレッシャーを受けた記憶が蘇ってきました。2年後にそういうものができて、今は国産の食材を使ったりして地域でいろいろな取り組みをしたり、新しい食品を作って国産の農産物をたくさん使っていこうということで、検証し、励ましていく仕組みができて動いています。

私は役人ですので、言われて「はいできます」ということはとても言えないのですが、5年くらい前にそのようなことを言われて、非常にプレッシャーを感じて制度を作ったということをいま思い出しています。

木の関係で言うと、いろいろな分野にまたがっていて省庁の縄張り争いなども昔はありました。今は、「ここは自分のものだ」というところも少なくなって我々のやることに文句を言われることもない時代になっているのかなとも思いますので、検討しなければいけないのかなと思っています。

宮林前回のほうは積み重ねていって作ったようですから、こちらの方もよろしくお願いしたいと思います。益田先生、デザイン関係を踏まえて、日本の伝統的なものを新しいデザインの中に組み入れていくような仕組みの提案などはありませんでしょうか。

益田観光ですね。木は土地に生えます。その土地でとれた材を使ってろくろを回し、裏山から漆を持ってきて加色をし、料理があり、そこに人が訪れて楽しむ。買っていく。そういう関係が正しいと思います。本当は誰も高島屋で買いたくないわけです。だけど産地に行ってもあるのは中国で作ったものだったり、本当に漆かどうかわからないものばかりです。それより何よりも売っていてくれればいいのに、行ってみてもお店も何もありません。結局それは東京に出てきて売られるということですから、北海道にしろ岐阜にしろ、その土地でつくり、そこへ行って買うという関係ですね。森の中で買い求め、それを使って料理を食べる。そういう関係を外国の人にしてもらえばいい。日本は全て輸出しようとしてきましたが、本当は輸出してはいけないものもあります。そのあたりは考えて、来ていただいて、観光と土地と一緒になってものを作って売っていくというデザインを総合的にしていくのがいいと思います。

赤池僕は東京丸の内駅前の新丸ビルの中にエコッツェリアというスペースを作ったり、二子玉川のライズの中にもカタリストBAを作りましたが、こうした拠点は欧米では「アーバンデザインセンター」と呼ばれています。地域の基盤整備とか地域おこしのために様々なステークホルダーやクリエイターが集まって、アーバンデザインセンターで日々議論を重ね、プログラム開発をしています。今度は僕、三井物産の赤間さんにプレッシャーをかけたいと思いますが、僕は山側にもアーバンデザインセンターのような、今、益田先生がおっしゃられたような、木だけではないいろいろな人に山のコンテンツを発信して地域の需要者につないでいく「フォレストデザインセンター」を三井物産さんの山側に一度モデルとして作っていただくと、「その手があったか!」と気づく地域が生まれてくる気がしました。

宮林そのあたり、どうでしょう。

赤間なかなかアクセスするのが大変なところにありますので、来ていただくだけで丸一日かかってしまうようなところに山がありますが、たしかに山を見ていただくということが非常に今大事だと思います。日本の山がどれほど荒れているのか。それとやはり、きちんと人間が手をかけた山はどれほど美しいか。また国土保全ということにどれほど役に立っているかということを、一度見ていただくことは非常に大事だろうと思います。なんとかアクセスを良くして、多くの人々にきちんとした適切な山づくりの現場を見ていただく努力はしなければいけないのだろうと思います。

宮林IMG_2098今、道の駅はどんどん展開してかなりの地域の産物が、あるいは地域の良さがみられます。6次産業化みたいなところに進んできた。これはやはり森の駅や木の駅のようなものをつくって地域の中に入っていく。僕は、フェースtoフェースでつながっていた都市と山村とのつながりが切れてしまっていると思っています。その切れたところをもう一度修復することで、日本の伝統、あるいは新しいグリーンエコノミーが生まれ変わってくる気がしてしょうがありません。オリンピックに向かって木を使っておもてなしをしていこうとすれば、私たちが使うこと、どういう良さがあるのかということを知ってもらうことが非常に重要なことだと思っています。

最後に皆さんから一言ずつ、20年に向けて、世界に向けてどういう形で木の文化や森を使っていく文化を知らせていけばいいかを聞いて、最後に末松さんにお聞きして終わりたいと思います。産業界から来ましたので、今度はデザイン界から。益田先生のほうからお願いします。

益田木の生まれ育ってきた履歴のようなものはやはり知りたいですよね。そうでないと、木のものを使おうと思っても消費者としてはどれが何だかわかりません。物語までをワンセットにしてデザインしていく必要があると思います。我々も注意深くやっていきたいと思いますので、使う方も気にしていただいて評価していただくと、消費者も「少し高くてもいいかな」ということになるのではないかと思います。

宮林まさにそれぞれ使う側と生産する側の心が一致していく、そこに物語があるという、大変日本的で素晴らしいと思います。

赤池最初のプレゼンテーションでCSVという考え方を提案させてもらいましたが、僕はこの民間参画の手法をどんどん使うべきだと思っています。やはり山作りや地域おこしなどいろいろなところに自社のサービスや技術を持ち込みたいというニーズを持っている企業はすごくたくさんあります。先ほど、都市の人間を山側につなぐのが難しいという話がありましたが、逆にEVを作っている自動車メーカーやEVのエネルギーを供給していくための情報通信を作っている会社、さらに言えばそれらをつないでいくJTBさんのような方と山側で何ができるか、自由闊達な構想を地域の中で議論しながら、実際に「こういうものをCSVとして連携開発しませんか」と積極的に企業の中にアピールしていく。それで生まれてくる成果や、山と都市をつないだビジネスモデルなどをぜひ、2020年に日本に来てくれる海外の方たちに教えて差し上げたいと思っています。

宮林CSRからCSVへ。そこに新しい地域づくりが生まれる。どうでしょう、このあたりのお話は。門脇さん。

門脇本当にいい話だと思います。私ども産業界、JAPICの役割としては、2020年はひとつのターゲットだと思っています。そこまでに皆さんがいろいろと企画されている地域での事例などについて、たとえばマスメディアなどで広く知ってもらう、目で見てわかる活動を何かできないかということについて取り組んでいきたいと思っています。さらに言えば、国産材の良さをわかってもらうために、国産材を使った建物ということがわかるように、例えばマークなどで「日本の木を使ったものなんだ」とわかる仕組みができないか、JAPICも既に取り組んでいますが、あわせてやっていきたいと思っています。

宮林ぜひ頑張ってもらいたいと思います。赤間さんはどうでしょう。

赤間2020年に向かってということですが、やはり次世代を担う子どもたちに、日本の森林を健全で持続可能な利用ができる姿で引き継ぐこと、その土台を作ることが2020年までの我々の課題だろうと思っています。現在我々にできることは、事業会社の一員として4000万人近い首都圏の都会で木が全然使われていませんので、床や壁、天井にも木は使えますから、事務所の空間に事業会社として率先して国産材を中心にした木づかいを進めていくような運動を、我々は及ばずながら続けていくことだと思っています。

宮林ぜひイニシアチブをとっていただきたいと思います。末松さんのほうから、何かいい方向性をいただけるとありがたいのですが。

末松IMG_2101お話にあったように、これから日本の木材を使っていろいろなことが動いていくということ、それが日本の経済や全体に対していいことだと思います。我々行政も、今まではただ効率一辺倒で、どうしたら安く木を伐れるかということだけを考えたり、林業者の生活などを考えていて、それはそれですごく大切なことでこれからも続けていきますが、お話を聞いていて思うのですが、きちんとした需要があって木が伐られていく、また伐られすぎないようにサスティナビリティをきちんと保つ形で伐っていくためには需要をきちんと出すことです。需要をどうやって出すかというところに、デザインなど新しい工夫が必要なのではないかと思います。そういう意味では新しい分野でのチャレンジというのはどんどんあります。

我々はよく、林業者や農業者に直接支援するもの以外は国は無駄ではないかと言われるのですが、私は逆だと思っています。林業をされる方は木を売って収入を得てもらう。我々は、新しい需要や開発のためのチャレンジ、木の良さを知ってもらうことなどに行政が支援することを進めていきたいと思います。

事業仕分けなどでいつも思うのですが、できるかどうかわからないことに国民の貴重な税金を払うのはけしからんと怒られて、「これはきっとできます」というと「民間に任せろ」と言われるのですが、チャレンジするというのはリスクがあることなので、本当にできることは我々行政がすることではなく皆さんがされて、どんどんビジネスとして儲けていただけばいいと思います。リスクがあるけれどもやったほうがいいということを行政なりに判断して進めていくという支援の気持ちを持ち続けていきたいと思いました。

宮林ありがとうございました。時間ですのでこのあたりで締めなければなりませんが、今日のお話の中でおわかりだったと思うのは、新しい出発点が来ているということです。2020年に向けて我々全体の国民運動としてやらなければならないのだということが見えてきたのではないかと思います。いろいろな関わり方がありますが、産学官連携でもいいですし、とにかくいろいろな人たちが多様な形で森林や木材に関わりながら、世界に向けた新しい利用形態、グリーンエコノミーの姿を見せてやろうという意気込みでスタートしていけばいいのではないかと思っています。

短い時間でしたが、中身としては合意がとれたと思います。18日以降のJAPICにスポンとはまっていただき、あとは赤池さんなどのアイデアもどんどん出していただきながら皆さんと一緒に進めていけるような方向性で2020年を迎えて、まさに木のおもてなしをしていきたい。そのような形で終わりにしたいと思います。皆様、ありがとうございました。

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