『森とつながる、「都市での木づかい」シンポジウム』
〜CSV時代の“企業の森”等を活かした、オフィス・店舗での木づかい〜
平成26年12月11日(木) 14:00〜16:00 「東京ビッグサイト」 レセプションホールA
主催/美しい森林づくり全国推進会議、林業復活・森林再生を推進する国民会議
共催/(公社)国土緑化推進機構、(一社)日本プロジェクト産業協議会/JAPIC、
経団連自然保護協議会、(一社)全国木材組合連合会、(NPO)活木活木森ネットワーク
後援/林野庁、(一社)日本林業協会、木材利用システム研究会
開催趣旨
2013年から、温室効果ガスの吸収源として森林による炭素固定量に加えて、建築物や家具等における木材の炭素固定量が計上されることになりました。また、木材は断熱性や調湿性により省エネ効果を発揮することから、地球環境保全に向けた木材利用への期待が高まっています。
都市化やIT化によりストレス社会が進展している現代においては、五感を通して心と身体を癒し、健康性や知的生産性を高める“木の良さ”が再評価されています。
これまで、全国的にCSRとしての「企業の森づくり」や「社有林」の整備が取り組まれていいますが、CSV時代を迎える中で、地球環境保全への貢献とともに、従業員や顧客等の快適環境の形成にも寄与する、オフィスや店舗等における内装や家具等の木質化が拡がっています。
さらに、地方が有する豊かな森林資源を活かして「都市での木づかい」を進めることは、「地方創生」に大いに貢献できる取組であるといえます。
そこで、「企業の森」や「地域の森」を活かして、オフィス・店舗等の木質化を図ることで、多様な主体による豊かな森づくりの裾野を拡げていくために、日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2014」の同時開催行事としてシンポジウムを開催します。
プログラム
開会挨拶
宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長)
今井 敏 (林野庁 長官)
基調講演
豊かな森づくりにつなぐ、新たなCSVとしての「都市での木づかい」のススメ
〜木材の省エネ効果・快適性向上効果を活かす
伊香賀 俊治 (慶應義塾大学 教授)
概要報告
新たに拡がる、「企業の森」を活かした「都市での木づかい」
〜社有林や企業の森を活かした、“オフィス・店舗での木づかい”の先進事例紹介
丸川 裕之 ((一社)日本プロジェクト産業協議会/JAPIC 専務理事)
事例報告
【1】三菱地所グループの森林CSV〜研修施設や注文住宅、マンション等での木材利用
見立坂 大輔 (三菱地所株式会社 環境CSR推進部)
【2】地域に根付いた森づくりと、店舗の内装・家具等への地域材利用
近藤 晃朗 (株式会社京都銀行 京都銀行総務部)
【3】「企業の森」の活動と間伐材を活用した店舗づくり
山本 卓司 (株式会社オンワードホールディングス 情報・環境経営部)
《モデレーター》
宮林 茂幸(事務局長、東京農業大学 教授)
《パネリスト》
牧元 幸司 (林野庁 林政部長)
門脇 直哉 ((一社)日本プロジェクト産業協議会/JAPIC 常務理事)
見立坂 大輔 (三菱地所(株))
近藤 晃朗 ((株)京都銀行)
山本 卓司 ((株)オンワードホールディングス)
■ 開催挨拶
宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長)
皆様、こんにちは。「美しい森林づくり全国推進会議」代表の出井でございます。今日は本当に暑い中、お越し頂きありがとうございます。
第1回目の「美しい森林づくり全国推進会議」が開催されたのは平成19年、第1次安倍内閣の時でした。それから早7年、一昨年の12月より2次安倍内閣が発足し、本日、8回目の美しい森林づくり全国推進会議を開催するとこととなりました。大変ご多忙の中、林農林水産大臣にもご出席いただいおります。しかも隣には、三井物産の槍田会長にもご出席いただきましたこと、誠に嬉しく思います
「ソニーの元CEOが森づくりをやっている」ということに対して、多くの方々は、普段の私の仕事とまったく関連がないという印象があるのか、どうしたのかと大変驚かれます。しかし、森と関わりのない人など誰一人いないはずです。私自身は生活に密着した森づくりを目指して、この仕事に取り組んでいるところです。
今回のシンポジウムは、槍田さんが副委員長を務めておられる「林業復活・森林再生を推進する国民会議」と、「美しい森づくり全国推進会議」の共同開催という形をとっています。これは、企業や団体が共同して木材の利用を進めなければいけないということから、経済界が一致協力した結果といえます。
私は、森に関してはいつも2つの面で思うところがあります。1つは森そのものをいかに活用するかということです。この仕事に関わるようになって、いろいろな森に連れて行っていただきますが、C.W.ニコルさんのアファンの森では、民有林と隣接する国有林とを一体で保全を行っていて、非常に良い仕組みで回っていました。こうした素晴らしい森を見ると、本当に森は、日本が誇る大きな宝の一つのように思います。
もう1つが、どうすれば企業がもっと日本の森の木を利用するようになるのかということ。今日も大臣にお会いしてすぐにお願いしたのですが、今度のオリンピックまでに、東京のシンボルとなるような素晴らしい木造の建物が、皆様の力でできると本当に良いなと考えております。ぜひここにいらっしゃる皆様には、そのような面で協力していただきたいと思います。
六本木にある私のオフィスから外を見ると、緑が広がっており、冬にはライトアップされて、非常に綺麗です。先日も今井林野庁長官においで頂きましたが、部屋に入るなり「おぉ、綺麗だな!」とおっしゃってくださるなど、東京にいても、私たちの生活は森と密着しているということを実感しております。
また、金曜日の夜から土日のウィークエンドは、ほぼ毎週軽井沢の別荘行っていますが、そこは、とにかく癒されるところです。木に囲まれながらワインを楽しんでいると、また週明けから頑張って働きたくなる、本当に気合の入る場所です。
森による癒しということで言えば、私が最近知り合った人に森林セラピストの小野なぎささんという方がいます。『森ではたらく! 27人の27の仕事』という本のなかでも紹介されている方で、今日も来てくださっています。5月に社内のメンバーと山梨に行った時に、小野さんに森を案内していただいたのですが、いきなり桜の木々に囲まれた場所にシートを敷いて、「ハイ、ここで寝てみてください。地面の音を感じながら桜を見ましょう」と。それが本当にすごく良くて、すっかり癒やされて帰ってきました。社員からも、「また連れて行ってくださいね」とすぐにリクエストがあったくらい、すばらしい体験でした。今、若い人たちの中でも、森で働く人が増えてきていますが、森林セラピストの彼女のような方が多く出てくることは、非常に良いことだと思います。
最後になりますが、是非この活動を活発にして、オリンピックを超えて、日本が盛り上がるということを行っていきたいと思います。しかも、林大臣は以前から森の活用の重要性に言及されていた方です。このような方が後ろ盾としていらっしゃるということは、林野庁としても大変心強いのではないかと思います。是非、必要な予算を確保し活動を活発にしていっていただきたいことをお願いして、私の挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。
今井 敏 (林野庁長官)
みなさん、こんにちは。林野庁長官の今井でございます。シンポジウム開催にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げさせていただきます。本日からはじまるエコプロダクツ2014におきまして、「森とつながる都市での木づかいシンポジウム」が開催できますことにお礼を申し上げますとともに、日頃から森林の保全や木材利用の推進にご理解とご協力を賜り、心から感謝申し上げます。
さて現在、環境問題について最大の課題の一つが地球温暖化であることは言うまでもありません。ちょうど今南米のペルーで国連の気候変動枠組み条約第20回締約国会議が開催されております。この会議では林野庁の担当官を含め、世界各国から関係者が集まり、温室効果ガスの削減目標に関するルールや、温暖化による被害の軽減対策について議論されております。森林や木材は地球温暖化防止に大きな役割を果たしています。木々が二酸化炭素を吸収することは元より、建物や家具などの木材製品は木に蓄積された炭素を固定し続けます。このような森林の機能は、木を伐った後にまた木を植えて、適切に手入れをしながら育て、また木を伐って利用する、という循環により持続的に発揮させていくことができるものであり、これらのサイクルがバランス良く守られていくことは、循環型社会を実現する上で大変重要です。
特に我が国は、国土の7割を森林が占める森林大国であることから地球温暖化対策において、二酸化炭素の吸収源としての森林の役割は非常に大きなものがあります。温暖化防止の機能を十分に果たしていくためには、間伐などの手入れをきちんと行い、豊富な森林資源を十分に活用することが不可欠です。適切な森林の管理を行い、森林資源をフルに活用していけば現在3割程度である木材の自給率はさらに向上し、また二酸化炭素の吸収、水源の涵養、国土の保全など、森林の有する様々な機能も十分に発揮されるようになります。
そのような好循環を生むためにも、積極的な木づかいは必要となります。木づかいとは、社会の様々な場面で国産材を積極的に利用していくという取り組みですが、このあと伊香賀先生が、木づかいが果たす環境面での貢献だけでなく健康や知的生産性への影響について、講演されると伺っております。この会場におきましても、木の良さを感じ、触れていただくためエントランスや展示会場などに国産材を使っておりますが、ご参集のみなさまにおかれましては、ぜひ木の持つ様々な利点、木と環境の関わりなどについて理解を深めていただき、仕事や生活の様々な場面で木づかいを取り入れていただければ幸いです。
また、近年は森の手入れなどで森林や環境に関心の深い方々にボランティア等で大きな貢献をいただいております。本会場におきましても、フォレスト・サポーターズを募集しているようですので、多くの新しい方々にご参加いただければ幸いです。最後に、本日のこの会が有意義となりますこと、会場のみなさまの益々のご発展を祈念して、私の挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願い致します。
■ 来賓挨拶
林 芳正(農林水産省大臣)
本日は、私どものシンポジウムにお越しいただきありがとうございます。今年は式年祭と遷宮が一緒に行われる60年に一度の年でした。それに合わせるかのように世の中でも木のブームが進んでいるような気がしています。
折しもリオ+20ではグリーンエコノミーというキーワードを掲げています。それを受けて、我々は次の世代をどう構築していくかという大きな課題を自らに課しました。
森林、林業、林産業については厳しい状況にあるとはいえ、この追い風に向かって大きく展開していく必要があります。「美しい森づくり」も立ち上げて10年近くが経ちますが、皆様のご協力により個人メンバー、フォレストサポーターズは4万人を超えて、ますます関心が高まっています。
本日は、テーマにあるように、グリーンエコノミーの大きなテーマの一つである木を使う社会に向かって、特に国産材等の利用の仕方、デザインの作り方、それを浸透させる社会の作り方といったところで議論をさせてもらえればと思っています。
本日最初は、東京造形大学の益田教授に基調講演をいただき、その後、環境デザイン等でデザインを中心に人間の行動までデザインしていく赤池さん、JAPICの高藪さん、さらには経団連等の皆様、最終的には三井物産の赤間さんからご報告をいただきながらパネルディスカッションへと移ってまいりたいと思います。
その中で、林野庁から末松広行林政部長に登場いただき、全体構造でグリーンエコノミーという社会やそれに向かう森林林業のありようを議論できればと思っています。忌憚のないご意見をいただきながら一緒に考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
佐藤 重芳 (全国森林組合連合会 会長)
本日は「2020年に向かう、新たな森づくりシンポジウム」のご盛会、心よりお喜び申し上げます。全国森林組合連合会会長の佐藤と申します。
私は、秋田県の奥羽山脈の真ん中で専業林家を継いで40年やっております。過去に大変良い時代も経験しましたけれども、今、一番苦労しております。林大臣にお会いするたびに申し上げていることなのですが、一番の山の問題、国土保全にも関わる問題です。立木価格が低すぎるため、山の健全な循環利用が完全に壊れてしまいました。木材材価にも、製品価格、素材価格など、いろいろとあるのですが、山に生えている木の価格、立木価格が非常に低いために、林業の採算が成り立たず、木が伐られないのです。林業の目的は、植えて育てて、最終的には伐って収益を上げることのはずなのですが、それが成り立たないものですから、伐れないのです。伐っても植えられない。これが今の山の現状、大きな問題なのです。
さらに2つ、3つの問題があるのです。例えば、森林の境界、所有者がわからなくなってきている問題。それから、国の方針として主伐・再造林が打ち出されましたが、苗木の供給体制が細ってしまっている。苗木生産者が仕事にならないということでピーク時の10分の1に減ってしまいました。これも大きな問題です。このように問題を挙げればきりがないのですが、資源小国といわれるわが国で再生可能な資源というのは山だけなのです。ですからこれまで育ててきた木材資源を使い尽くすのではなく、30年後、50年後の木材資源をいま植林しなければなりません。総力をあげて再造林を進め、将来の山の循環を準備しなくてはいけません。将来の木材資源を準備するために、いま造林を進めなければなりません。そのためには、先ほど大臣からもお話がありましたように、木を使うということなんですね。国産材を使うことで初めて循環が出てくるわけですから、これからはとにかく国産材の利用拡大に、国とともに私ども森林組合もがんばっていきたいと思います。
先月24日、政府は骨太の方針を閣議決定しました。農林水産省では「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改訂しました。CLTという新しい技術開発もされて、国産材の需要拡大に向けて非常にいい動きが出てきています。ですから、これからもみなさんで拍車をかけて、木を使っていこう、木でできるものは何でも木で代替していこうと、そういう1つの大きなきっかけがこの場から生まれれば本当にうれしく思います。
今日の企画をしていただいたみなさま方に心よりお礼を申しあげまして挨拶といたします。ありがとうございました。
吉条 芳明 (全国木材組合連合会 会長)
全国木材組合連合会の吉条と申します。本日は林農林水産大臣のご臨席をいただき誠にありがとうございます。「美しい森づくり全国推進会議」と「林業・復活森林再生を推進する国民会議」の主催によるシンポジウムが大勢のみなさま方のご参集により、このように盛大に開催されていますことを心よりお喜びを申し上げます。
木材業界に携わるものとして、多くのみなさま方が日本の森林、林業問題に関心を持っていただいていることを大変ありがたく存じております。日本の森林、林業、木材産業を取り巻く状況、とりわけ木材産業、木材利用をめぐる状況は大きく変化をしてきています。森林林業、木材産業に力強い追い風が、なかでも木材利用の促進に大きなチャンスが巡ってきていると実感しています。
かつて木材を使うことは、森林の伐採による自然破壊につながるといった批判的な見方がありました。今日、地球環境問題が世界共通の喫緊の課題として取り上げられるなか、再利用・再生産が可能な省エネ資源である木材を使うことは、二酸化炭素の吸収源である森林の活性化に役立つとともに、二酸化炭素の固定・蓄蔵による地球温暖化の防止、低炭素社会の形成に大きく貢献しているという認識が広がっています。こうした状況を背景に公共建築物等木材利用促進法の施行、木材利用ポイントの導入、地域型住宅ブランド化事業など、国民的な支援を受け、木材利用促進の施策が打ち出されております。また地域の経済を再生するうえでも、身近にある資源を有効に活用する林業の活性化、成長産業化を期待する声が広く聞かれます。戦後の復興から地域のみなさま方のご尽力により植林された森林が今、収穫期を迎えていますが、一方でその森林が林業の衰退により荒廃の危機に瀕しています。森林・林業の活性化のためには、生育した森林資源を活用していくことが避けられない課題であります。そのためにも我々がしっかりと木材利用の課題に取り組んでいかなければなりません。我々、木材業界では、住宅、公共建築などへの木材利用の推進にとどまらず、大都市の民間施設への木材利用など、これまで取り組みの薄かった分野にも木材利用を拡大するための働きかけを強めていこうと考えているところであります。
川上のみなさまと我々、木材業界関係者が力を合わせ、本日お集まりのみなさまの後押しをいただき、新しい流れを作りだすことができると期待しております。本日の会議の経緯として、日本の森林・林業・木材産業の活性化、新たな動きが始まることを期待するとともに、みなさまのご健勝を心からご祈念を申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
基調報告 >>
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